仕事で遅くなった夜、ふと遠回りして帰ってみようと普段と違う道を行くと、見慣れないものを見つける。ラーメン屋台である。平成も終わろうというこのご時世にラーメン屋台とはまたよいものを見つけた。あまり空腹ではなかったけど興味が勝ちふらふらと暖簾をくぐる。
「いらっしゃい。なんにしますか」
と大将の声。のぼりに書いてある豚肉ラーメン600円を注文し、簡易的に作られた席に腰を下ろす。屋台とは不思議なものである。ラーメンを待つということですらまったく特別なことに感じさせてくれる。少し落ち着いたので見回すと、営業時間は18時ごろから25時半まで雨の日は休みというはりがみが目に入る。メニューをよく見ると豚肉ラーメンの他にもホルモンラーメンやカレーまぜ麺などのラインナップも。これはまた飲んだ帰りが楽しみになるなあとワクワクしていると
「お待たせしました」
豚肉ラーメンが到着。甘めの和風だしのそれはまるで鍋の〆ラーメンのようだった。短めの麺、これは棒ラーメンかな。一撃必殺みたいなパンチ力はないけどまるくてあたたかい味わい深さ。大将がサービスで一緒に出してくれたキムチに箸をつける。豚肉の脂とキムチっていうのは最高のコンビネーションだよなあ。ここでふとカウンターのゴマに気がつく。もしかして、パラパラとふりかけてみると……ドンピシャ。甘めのスープにゴマの香りがアクセントになり、今夜の一杯が完成した。
「ごちそうさま。おおきに」
気がつけば夢中で麺をすすり、家路に着いていた。遅くなってしまったから早く休もう、なんておもい今にいたる。昨夜のあれはもしかして夢だったのだろうか。そんな風に感じる体験だった。
今日は雨の予報だ。